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“ビジネス基礎力”向上計画 第6回〜できる人たちが持つ「3つのスキル」とは
2004年11月29日 09時00分

前回は、スキルには「ユニークなスキル」と「ファンダメンタルなスキル」があること、そして、ファンダメンタルなスキルこそ重要なスキルであることをお話しました。今回は、このファンダメンタルなスキルについて、もう少し詳しくお話しましょう。

私が外資系金融機関の人事部長・人事コンサルタントとして、長年多くの方を見てきた経験から、皆さんに確信を持って言えることがあります。それは、いわゆる「できる人たち」には共通する点があるということです。彼らには「三つの能力(スキル)」、すなわち「人に理解させる力(Educate)」、「人を動かす力(Influence)」、「人を元気づける力(Energize)」が備わっていることです。

このできる人たちが備え持つ三つのスキルを一体どのくらい持っているのか、あるいは持っていないのかが、その人の持つトータルな業務遂行能力を左右するのです。これさえ身に付けていれば、どんな職種であっても必ず能力を発揮し実績をつくることができる、“ベーシックなスキル”と言い換えることもできるでしょう。それでは、これら三つのベーシックなスキルを順にご紹介していきます。

人に理解させる力――“Educate”

この“Educate”、直訳すれば「教育する」ということになります。私は「他人に理解させる力」と解釈しています。相手がこちらの話を聞こう、学ぼう、と変化するのをただ一方的に待つのではなく、むしろ自ら積極的に相手にアプローチして、その結果「相手を変える」、つまり、「理解させる」という意味です。こうした積極的な働きかけを“Educate”と表現します。

“Educate”は、ただ単に、下から仕掛けて上へ向かう(例えば上司に対して)だけではありません。横(例えば同僚やカスタマーなど)に、さらに下(例えば部下)へと、それこそ縦横無尽に自分の考えを相手に分からせる力なのです。

ビジネスの現場では、自分のことを相手に分かってもらうことが何より先決となります。例えば、自分は相手に対して何を「ギブ」できるのかを知ってもらった上でキチンと評価してもらう。自分のことを積極的に相手に分かってもらう、気づいてもらう必要があるときに、とりわけ役に立つのがこの“Educate”というスキルです。

人を動かす力――“Influence”

さて、次にご紹介したいスキルは“Influence”です。この“Influence”――英語を直訳すると影響力となります。私は、「相手に対して影響を与えること」、つまり「人を動かす力」という意味で利用しています。

ただし、人を動かすと言っても、いわゆる職制の力(つまり上司がその部下に命令する形)で行うのではない、ということを覚えておいてください。地位や権威に頼って他人を動かしたくても、「そんなに偉くないもん」という方が多いことでしょう。それでも大丈夫です。仮にそんなあなたであったとしても、「君の言うことなら、ひとつ聞いてやろう」と相手に思わせる不思議な力がこの“Influence”なのです。

“Influence” に関して大切なことは、その成果をキチンと押さえておかなければいけない点です。“Influence”をキチンと発揮できたかどうかは、比較的ハッキリと分かります。その後、相手が変化したかどうかを見ればよいのです。わたしとの合意に向けて行動するに至るまで、相手を駆り立てることができたのかどうか。

ちょっと難しい表現になってしまいました。つまり「ただ言いっ放しにするのではなく、相手がキチンと行動に移すところ」までいって、初めて“Influence”を行使したと言えるのです。

人を元気づける力――“Energize”

三つ目のスキルは、“Energize”です。この“Energize”――「相手を元気よくイキイキとさせる力」という意味です。私はこれを「人を元気づける力」と名付けています。

あなた自身が元気でイキイキとしていることはもちろんですが、あなたの周囲の人もイキイキとさせる力という意味です。この「イキイキ」という躍動感あふれる言葉は、私たちが人生の目標に向かって突き進んでいくときに、最も大切になるものと言えます。

ちなみに人生の目標を立てる場合、ただ単に「お金持ちになる」とか「人のためになる」という目標では駄目です。「できるだけ具体的に」、「自分がいつもハッキリと分かるような目標」を、自分のカンバスにイキイキと描くようにつくらねばならないのです。そして、その目標が「イキイキ」としていればいるほど、達成できる可能性も高まってきます。

例えば、次のような目標はいかがでしょうか。

「ボクの目標は自分の会社を上場させること。そのためには、今の製品をここ日本で“標準品”にしてみせる。それによって、今後3年間に売り上げを2倍にして、その勢いで東証マザーズに上場することにする。その後は、着実に売り上げを伸ばして、5年以内には東証一部上場会社に、いずれはNYSE(ニューヨーク証券市場)に上場して、世界へ打って出てみせる……」。

これは、すでに起業している IT関連の会社で、当たり前のように語られている“ビジョン”です。このような、「イキイキ」として「ハッキリ」とした目標があれば、おのずと元気が生まれます。そんな元気でイキイキとしたあなたは、知らず知らずのうちに周囲を元気づけていることでしょう。

どうでしょうか。単純な話、元気なヤツはだれの目にも留まるのです。

「類は友を呼ぶ」を良い意味で使うとすれば、元気なヤツの周囲には、自然と元気なヤツが集まってくると言えます。そんな好循環の輪を、自分の周囲にドンドン広げていくことが大切なのです。そう、だから私にとっても、みなさんにとっても、この“Energize”――“人を元気づける力”というのは必要不可欠なスキルなのです。

ここまで読まれた方は、すでに気がついた人もいるかもしれません。実は、この三つの能力(スキル)こそが、「ファンダメンタルなスキル」の中心となるものなのです。